縁日の蜂谷淳平です。
11月から始まった猟期もまもなく終わろうとしています。
今季は例年よりは山に行く回数は少なかったものの、テーマを持って山に臨むことができ充実した猟期となりました。
今年の猟期で感じたことをお話したいと思います。
秋田マタギと岩手で鹿猟
マタギもんぺの制作でも、一緒にプロジェクトを作りあげてきた秋田のマタギの皆さん。
今年は秋田マタギでアーティストの「永沢碧衣(ながさわ あおい)」さんが鹿猟を学びたいということで岩手で狩猟登録しました。
狩猟しない方にとっては意外だと思う方も多いのですが、都道府県ごとに狩猟登録をすることで、狩猟免許を持っていればどこの県でも狩猟をすることができます。
秋田といえば熊猟ですが、近年秋田でも鹿が増えてつつあり、今のうちから鹿猟のノウハウを学ぶために秋田から岩手まで何度も足を運んでくれました。
狩猟には様々なスタイルがあるのですが、その中でも私が一番好きなのが忍び猟(しのびりょう)です。
忍び猟は自力で山に入り、鹿に気付かれないように気配を消して鹿を探す猟法のことです。
忍び猟はどの猟法よりも体力を使い、難しさもあるのですが、鹿と対等に向き合うことができるので、鹿が獲れた時の喜びが一番大きいスタイルで、私はほぼこのスタイルで山に入ります。
林道など整備されていない険しい山道をひたすら歩くのですが、弱音も吐かずに付いてくる碧衣さんを見ていると、さすが秋田マタギ!だと感心します。 根性があるし、山が本当に好きなことが伝わってきます。
今までの狩猟は閉鎖的なところが多く、地域を超えた猟師同士の交流などあまり多くありませんでした。
ましてや県を越えての交流など、ほぼ無いに等しかったのではないでしょうか。
しかし、今は猟師の高齢化に伴って、狩猟者がどんどん減少しています。
そのために地域によっては、効率的に狩猟を行える集団猟の『巻狩(まきがり)』も人数が揃わずできない地域も増えてきています。
なので、これからの世代の狩猟はもっと開かれたものにして、狩猟活動を助け合ったり知識や技術を教え合ったりできることがとても大切な時代だと考えています。
岩手でも近年熊が増加し、人的被害も多く発生しています。

熊はもともと岩手にも多くいたのですが、熊を獲る技術や解体スキルなどは、やはり秋田マタギに敵うものはないと思います。
なので、熊のことについては今度は私たちが秋田に行って学ぶなど、県境を越えた交流が益々増えてくれば狩猟界隈も未来への兆しも明るいものになってくると感じています。
今年の山で感じたこと
今年は例年以上に山の中が賑やかだなと感じました。
動物たちが山の中で悠々と暮らしている様子を見ることができた一年でした。
その要因の一つが木の実などがとても多いこと。昨年はドングリなどの木の実が大不作で、山に食べ物がほとんど無い状態でした。
そのため熊などの動物たちが、山から人里に降りて食べ物を探している光景が何度も目撃されてきました。
今年は山を歩いていると至るところでドングリなどの木の実があちこちに落ちていて、鹿が悠々とお食事をしているところに何度も出くわす場面がありました。
猟師仲間からも今年は「里の方で鹿を見なくなった」という話を沢山聞くシーズンでしたが、一つの要因として考えられるのは、『里に降りなくても山で十分に過ごすことができる食料』があったということでもあると感じています。
「里で鹿を見なくなった」ということがあちこちから聞こえたシーズンではありましたが、忍び猟で奥山に行くと鹿は沢山いることをすごく実感します。
個体数が減っているとは思えないほど、沢山の鹿に会うことができました。
これも有害捕獲で猟師の皆さんが頑張って活動したお陰で、猟圧(猟師による鹿へのプレッシャー)が高まり鹿が警戒して里に降りて来なくなったと考えられます。
鹿も学習するので、警戒心の強い賢い鹿が生き残り、子供たちも親から逃げ方などを学んでいるのではないかと個人的には考えています。
それでも農家さんや林業関係の皆さんの鹿の被害は減っている訳ではないので、引き続き対策も考えて行かなければならない課題です。
今年も山に沢山入って、鹿のお肉も沢山いただきました。
鹿を授からない日もあるのですが、自然の中に身を置くだけで落ち着いた気持ちになれたり、心が澄んでいくような感覚を得ることができます。
動物たちの気配を感じながら、風の音に耳を澄ますだけの時間など、日常の暮らしの中ではなかなか出来ない時間です。
狩猟でなくとも、身近にある自然に少し足を伸ばしてみると、人の暮らしのすぐ側で沢山の生き物の営みがあることを発見できると思います。
ぜひ皆さんも自然を傍に感じながら、豊かな時間を過ごしてみてください。
私も縁日の店舗にいることもあるので、見かけたら是非お声がけくださいね。
皆さんと狩猟や山のお話などできること楽しみにしています◎